おすすめ内のエントリ

クドリャフカの順番 / 米澤穂信著

2007年12月 16日 日曜日

クドリャフカの順番―「十文字」事件
クドリャフカの順番―「十文字」事件
著者: 米澤 穂信
出版者: 角川書店
発売日: 2005-07-01

いよいよ神山高校文化祭が始まった。古典部発行の『氷菓』も無事完成したのだが、文化祭を前に大きな問題に直面した。なんと30部の予定だった部数が、手違いで200部刷られてしまったのだ。損得分岐点は120部。なんとか売り切って文化祭を楽しみたい古典部だったが、その文化祭も一筋縄ではいかない事件が起きて・・・

第1作で古典部が発足、第2作で『氷菓』の作成、そしていよいよ文化祭本番の第3作。4人それぞれの視点が入り交じって『氷菓』を売るために頑張る様が描写されるのですが、意外なところに伏線があったりして、単なる青春群像小説ではない、かなりきっちりしたミステリに仕上がってます。「これはあえて視点を変えてるんだろうなあ」とは思ってたけど、こんなところまで作り込んでたのかぁとラストで感動してしまいました。ミステリ好きな方におすすめ。今までの3作の中では一番面白かったかも。



図書館革命 / 有川浩著

2007年11月 16日 金曜日

図書館革命図書館革命
著者: 有川 浩
発売日: 2007-11-07


福井県の敦賀原発がテロリストの標的となった。大きな被害は免れたものの、その後が問題になる。そのテロリストたちの攻撃が、当麻蔵人『原発危機』にそっくりだということから、それに乗じたメディア良化委員会が当麻を確保しようと動き出したのだ。間一髪で図書隊に保護された当麻だったが、彼を巡るメディア良化委員会と図書隊の対立は、世論も動かすことに・・・。

『図書館戦争シリーズ』第4作目にして完結編。残念ながら「図書館」の名前はついていても、既にもう「図書館」は舞台のみで、最後のこの1作は当麻というキーマンを中心に、メディア良化法を無効にできるかどうか、という図書隊とメディア良化委員会の攻防戦になっています。ああ、もちろんキャラクター同士の行く末も結末があるんですが(おいおい死亡フラグかよ、と思ったのは私だけ?(笑))、それだけじゃなくて、検閲の件はすごーく考えさせられるかも。

今、スカパーで『ボストンリーガル』という法律事務所ドラマを見てるんですが、ちょうど象徴的なエピソードがありました。市長選で新人候補が有力に戦っていて、ほぼ当選も確実と言われていたときに、現職が意図的に真実を曲げた内容のネガティブキャンペーンCMを打つ。新人候補はそれを差し止めようと裁判所に訴えるのですが、結局差し止めは認められないのです。そのときに判事が言う言葉が「それがアメリカです」。ウソの内容で相手を誹謗してても、言論の自由が優先されるんですね。もちろん、それに対抗するには名誉毀損で訴えるという方法になるのですが、それでは時間が掛かりすぎる。市長選に間に合わない。だから差し止めしろと要求を出しても、「言論の自由」でそれはできないと言われる。徹底しててすごいです。この場合は、それを悪用しようとするほうも間違っているのですが、そのくらい言論の自由という権利は強い権利であり、同時にアメリカはその重要性をものすごく意識しているのではと思ったのでした。この本でも「テロリストの教科書になりうるから」という言い分で検閲を強化しようとする動きが出るのですが(それって現実にありそうで怖い)、読んでいて先の『ボストンリーガル』のエピソードを思い出したのでした。さてさて、図書隊の対抗策は?!

あと、このシリーズでずーっと語られてるテーマの一つ、善意がもたらす問題というのも面白い着眼点。正義感からくる「やりすぎ」、要するに「大きなお世話」というやつですが、善意から出ているだけに反論しにくいっていうところが「ああそうだよなあ」と思うのです。郁の過保護な両親のエピソードや、毬江ちゃんと小牧教官のエピソード、今回も「『片手落ち』という表現に文句を言う読者」という形でも表現されていましたが、言った本人は正しいと思ってやっているだけに質が悪いって、なるほどなあという気がします。著者本人が実際に辟易してることがあるのかなあって思うんですが。

キャラ萌え、あり得ない設定、最後までトンパチというストーリーの派手さの一方で、結構骨格はしっかりしてるから、支持されてるんじゃないかなぁと思うのでした。恋愛ストーリーが嫌いな方にはあまり向いてませんし、どこまでもやっぱりコバルト系(の意味が分かる人は多分同年代)なんですが、私は結構楽しく読めましたし、おすすめです。

このシリーズのその他の感想
図書館戦争
図書館内乱
図書館危機



本泥棒 / マークース・ズーサック著

2007年8月 28日 火曜日

本泥棒本泥棒
著者: マークース・ズーサック
発売日: 2007-07-01


ナチス政権下のドイツ。リーゼルが初めて本を盗んだのは、里親のところへ行く途中だった。そしてまだ字を読むこともできなかった。ヒンメル通りの家で成長したリーゼルは、本を通じて様々なことを学んでいく。

間に3冊別の本を読んでいたりしたこともあって、すんごく時間がかかりましたが、逆にそれでも途中でやめなかったくらい、力のある小説でした。死神が語り手という趣向ながら、その死神が妙に人情的だったり、結末を先に言ったりと、ちょっと普通のストーリーっぽく無いのですが、その割になぜかリーゼルという子供と、それを取り巻くヒンメル通りの人々に引き込まれる不思議な物語です。逆にその結末を先に言うという趣向によって、ラストが素敵だなあと思えるかもしれません。もちろん、この時代ですから、根底にあるのはまず戦争の悲惨さなのですが、それを語りながらも、それはあくまで舞台装置といった感じなのも好感が持てます。おすすめ。



ワーキング・ホリデー / 坂木司著

2007年8月 12日 日曜日

ワーキング・ホリデー
ワーキング・ホリデー
著者: 坂木 司
出版者: 文藝春秋
発売日: 2007-06-01

世間では夏休みが始まった7月。ホストクラブに少年が現れた。中に通され接客をしている俺、ヤマトの前に立ってそいつは言った。「はじめまして、お父さん」そこから進とヤマトの奇妙な共同生活が始まった。

母子家庭で料理も上手。細かいことにも気づくその性格のせいで、学校では「お母さん」と呼ばれる進少年と、元ヤンキーの今は売れないホスト、取り柄はけんかっ早いことだけのヤマトの夏休み物語。ポプラ社とかが出しそうなよくある成長物語ですけれども、この手の本を読んだのが結構久しぶりだったこともあってなかなか楽しく読めました。このところ読んだ本の中ではいちおしかも。いろいろやることがたまっていて、なかなか読書する時間が取れないのですが(特に休みだと電車に乗らないのも大きい)、この本はあっという間に読んでしまいました。訳あって順番を先にしたのですが、次また面白い本に会えないかなーといったワクワク感が取り戻せたかもしれません。おすすめ。



小説こちら葛飾区亀有公園前派出所 / 大沢在昌ほか著

2007年7月 20日 金曜日

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所小説こちら葛飾区亀有公園前派出所
著者: 大沢 在昌ほか
発売日: 2007-05-24


『こち亀』の連載30周年記念で行われた、推理作家協会とのコラボレーション。大沢在昌、石田衣良、今野敏、柴田よしき、京極夏彦、逢坂剛、東野圭吾という超豪華執筆陣が、それぞれのキャラクターと『こち亀』を融合させるというすごいアンソロジーです。元が漫画ですから、全体的に漫画色が濃いのですが、「新宿鮫シリーズ」藪の知られざる過去とか、京極堂のその後とか、とりあえずファンにはその設定自体がたまらないという感じです。

実は私、一度も読んだことが無いんですよね>こち亀。亀有は比較的近かったというか、毎日亀有を通過しつつ通学・通勤してたので、「亀有」自体はなじみがあるんですけどね。それでも両さんの名前くらいは知っているし、亀有公園前派出所は、とにかく破天荒なのも知ってるくらい有名ですよね。そのくらいでも十分楽しめる小説です。どちらかというと、各著者のシリーズを知っているほうが、「夢の実現」といった感じが沸いてくるかもしれません。私、アンソロジーというと必ず1人、2人、全くなじみのない著者というのがいるのですが、今回珍しく全員読んでて、しかも好きな作家ばかり。「しばらく本屋に寄っていなかったものだから、今まで気づかなくてごめん!」と思ったアンソロジーでした。

というわけで、各著者を好きな方は是非。もう大分前の発行なので、今更私が勧めるほどのこともないかもしれませんが。



[ドラマ/スカパー]Bones

2007年6月 13日 水曜日

原題:Bones season 1
出演 : エミリー・デシャネル、デビッド・ボレアナズ、ミカエラ・コンリン、エリック・ミレガン、TJサイン、ジョナサン・アダムズほか

テンペランス・ブレナン博士(エミリー・デシャネル)はジェファソニアン研究所で働く法人類学者。身元不明の上、損傷の激しい遺体が発見されたときに、彼女の高い技術が力を発揮する。一方、彼女に依頼を持ちかけるのはFBI捜査官のブース(デビッド・ボレアナズ)。彼は彼女のような骨ばかりを見ている研究者に不信感を持っている。事件は人間にあたってこそ解決。それが彼のモットーだ。

天才肌で、かなり変わったところのあるテンペランスを受け入れてくれるのが、これまたちょっと変わった研究所の面々。テンペランスのアシスタントとして働きながら博士号取得のための研究を行っている若き天才ザック、虫が専門のホッチンズ博士、そしてテンペランスの親友であり、コンピューターグラフィックスの使い手でもあるアンジェラ。今日もまた、死因も不明な身元不明死体が持ち込まれて・・・

とりあえず「死因も分からず、損傷の激しい身元不明の遺体」が各エピソードのスタートなので、うぁー毎回毎回よくこんな気持ち悪い映像流してて問題にならないなー(さすがすごいぜアメリカは)と思うようなグロい映像が毎回登場。ほぼ白骨化してるのは逆にまし、みたいな。他にもこういう刑事モノというか、法医学もののドラマシリーズは多いのですが、たまに「ぎょえー」っていう映像があって、文化の違いを感じます。こういうのはOKなんですね。

ただ、それさえ気にならなければかなり面白い。このシリーズの第一の魅力は、ちょっとどころかかなり変わっているテンペランスの強い割に弱いところ(日本語でぴったりなのは、正にツンデレ)、それを取り巻く研究所の愉快な仲間たち、そしてこれまたツンデレっぽいブース捜査官という人間関係の部分かなーと思うんですよね。本題である身元不明の遺体を研究者たちそれぞれの得意分野から調査し、見事死因を、そして犯人を探り当てるという部分も十分面白いんですけれども。

テンペランスにはすごく複雑な過去があることがエピソードが進むごとに断片的に話題に上るのですが、シーズン1のラストは正にその「複雑な過去」の一部が明かされるというものでした。しかし、常にシーズン2、さらにその先が作られることを想定して制作されるというアメリカのドラマだけあって、やっぱり最後は「おいおい、これで終わり?」あくまで明かされたのはごく一部でした。少なくともシーズン2は既に放送され、向こうではDVD化もされているようなので、それが日本で放送されるのを楽しみに待っています。それまではまた今週末から放送されるという「Bones 字幕版」を楽しむことにします。。。FOXチャンネルが見られる方は是非。結構おすすめです。



人柱はミイラと出会う / 石持浅海著

2007年6月 4日 月曜日

人柱はミイラと出会う人柱はミイラと出会う
著者: 石持 浅海
発売日: 2007-05


ポーランドからの留学生として札幌の議員・一木家にホームステイしているリリーは、日本の奇妙な風習に日々驚いている。まず驚いたのが人柱だ。人柱と言っても現代の人柱は人命を犠牲にしたりはしない。建造物の土台部分に小さな部屋を作り、人柱という専門職業の人がそこに建造物の外観が出来るまで、数ヶ月から数年篭るという。他にも、政治家につく黒衣、お歯黒、厄年休暇、警察犬ならぬ警察鷹、ミョウガで悪いことを忘れる、参勤交代・・・と日本ならではの風習に出会い、しかもそれには事件まで付随して・・・。

過去にはあったけど今はもうないという日本古来の風習を現代に蘇らせ、その設定を土台に語られる日常ミステリ。まずその設定がすごーく笑える。本当にこういうのがあってもおかしくないなあ(日本人として受け入れられちゃうかも?)みたいなものばかりで、そこだけでも楽しめます。それに加えて、その奇妙な風習と出会うリリーさんは、同時に奇妙な事件にも出会うのですが、それを見事な推理で解き明かすのが、リリーさんのホームステイ先、一木家の甥っ子であり、職業・人柱の東郷。リリーさんはその透明感あふれる人柱さんに一目ぼれ、そのキャラクター部分の魅力も楽しめます。この著者の本は、重いイメージが強いのですが、長編よりもこういう連作短編集のほうがテンポも良くてささっと読めるのかもしれないですね。読み終わったら、相方にさっそく持っていかれました。おすすめです。